葬儀屋 独り言

葬儀について、一般葬、家族葬、仏事、日々の気づきなど、葬儀の仕事をする中でご縁を頂きお手伝いする中で、固定観念にとらわれずご当家と向き合える葬儀屋で居るために、ご協力よろしくお願い致します

こんなお客様、いらっしゃいました!

本日は、最近、仏壇店へ来店されて、相談を受けた件で、書いてみたいと思います。少し長くなるかもしれませんが、知っておいて損は無いと思うので、よろしくお願いします。

お客様の相談とは、ご自分の葬儀の事で、10年ほど前にご主人を亡くされ看取ってもらえる親族もおらずもしもの時はどうしたら良いのかという内容のものでした。このようなお悩みの方は結構多くなってると思います。このお客様はマンションにて一人暮らしなのですが、老人ホームや施設にお住いの方、入院中の方にもこのお客様の置かれている環境になるか、似たような状況に陥る可能性が、あると思うのです。そこで自分なりに調べてみました。死後事務委任契約をご存知でしょうか?
人が死亡すると、葬儀の主宰、役所への行政手続き、病院代等の清算、年金手続き、クレジットカードの解約など、様々な事務手続きが発生します。
一般的に、これら事務手続きは家族や親族が行ってくれますが、身寄りがいない方の場合には誰もその作業をしてくれる人はいません。高齢化社会が進み、子供がいない夫婦が増え、家族関係が薄くなった現代においては、この死後事務を行う方が誰もいないまま亡くなる方が後を絶ちません。
このように、死後の煩雑な事務手続きを生前にうちに誰かへ委任しておくことができる制度が「死後事務委任契約」です。

死後事務が発生する可能性があることをなるべく広く委任しておく必要があります。この死後事務委任は、身近な親族や知人へ依頼をするだけではなく、司法書士行政書士のような専門家へ依頼することも可能です。
たとえば、以下のような死後事務について委任することが想定されます。
死後事務委任に盛り込む内容の一例
(1)行政官庁等への諸届(役所への死亡届の提出、戸籍関係手続き、健康保険や年金の資格抹消申請、その  他)の事務 
(2)直葬、火葬、納骨、埋葬に関する事務 
(3)永代供養に関する事務 
(4)生活用品・家財道具等の遺品の整理・処分に関する事務 
(5)医療費、入院費等の清算手続きに関する事務 
(6)老人ホーム等の施設利用料等の支払い及び入居一時金等の受領に関する事務 
(7)公共サービス等の名義変更・解約・清算手続きに関する事務 
(8)親族等への連絡に関する事務  
(9)インターネット上のホームページ、ブログ、SNS等への死亡の告知、または閉鎖、解約や退会処理に関する事務 
(10)保有するパソコンの内部情報の消去事務
当然ですが、死後事務委任契約が発動するころには、委任者は亡くなっておりますので、死後事務委任の内容を変更することはできません。つまり、死後事務委任契約を作成する段階で、なるべく広く委任事項を盛り込んでおき、死後に不都合が生じないようにしておかなければいけません。

死後事務委任の受任者と、遺言執行者は、それぞれ亡くなった方のために手続きを進める点で同じです。
しかし、死後事務委任と遺言では大きな違いがあります。
遺言では、あくまでも財産承継についての記載しかすることができません。不動産は〇〇へ相続させるとか、預貯金を△△へ遺贈するとか、遺産の承継先を決めておくのが遺言です。そして、遺言の内容を実現するだけしかできない遺言執行者は、遺言で定められた承継についてしか手続きを行うことができません。
対して、死後事務委任は、遺言と違って契約なので自由に取り決めることができます(財産の承継以外のことに限る)。
葬儀は〇〇寺でするとか、直葬の方法を希望するとか、埋葬はどうするとか、お墓はどうしたい、自分のペットは誰々に引き継いでほしいとか、自由に決めておくことができるのです。
死後事務委任だけを作っておいても財産承継の部分については対応できませんし、遺言だけ書いても死後事務については任せることができません。
つまり、自分の死後のことを網羅的に決めておくのなら、「遺言公正証書+死後事務委任契約公正証書」という2つの公正証書を残しておく必要があります。
もし、身寄りがなく誰にも頼る人がいないというのなら、遺言と死後事務委任についてセットで第三者の専門家(司法書士行政書士など)へ依頼をしておけば、自分の死後について誰にも迷惑をかける心配がなくなります。

死後事務は、委任者の死亡によって即開始します。委任者が死亡すれば、遺体の引き取り・葬儀の手配・死亡届など、すぐにやらなければいけないことが山のように出てきます。(死亡から時間が経ってから動きだす遺言執行者とはそこが違います。)
そして、それと同時に葬儀や火葬・病院代の支払いなど、様々な費用が発生してきます。このような費用を死後事務委任契約の受任者が立て替えて支払わなければいけないとなると大変ですし、もし万が一受任者に手持ちがないと葬儀を行うことができなくなってしまいます。
そんなときに備えて、一定額の金額を死後事務委任契約時に委任者から受任者に対して預託しておく方法があります。
葬儀の方法や規模などによって大きく異なりますが、預託金は100万円~150万円程度になることが一般的のようです。
これについては、司法書士行政書士のような専門家へ依頼するのも同様です。事前に専門家へお金を預託しておき、もしもの時に備えてもらうといいでしょう。
なお、預託を受けたお金はあくまでも委任者のものですので、受任者は自分の財産と分別管理をしなければいけないので注意が必要です。

 

皆様、どう思われますか?自分は葬儀屋なので、故人様をお迎えする側ですが、送られる側の立場の大家さん病院関係の方、施設の職員の方たちにも、知っておいて頂きたいと思うのです。そして、その橋渡しが出来る葬儀屋がいても良い様に思うのです。

 

今回は少し長くなってしまいました。最後までお読み頂き、ありがとうございました!